私とハープのこと①
自宅に、昨年の水害で壊れてしまった楽器があります。
今回は、この子のことを書いていこうと思います。
昨年の8月27日、豪雨により佐賀県の沢山の地域が浸水しました。
早朝に猛烈に雨が降り、教室の様子を確認しに
朝車で向かうと、道路は冠水だらけで進めなくて、途中で車を降りて、膝まである水の中をじゃぶじゃぶ進み、教室にたどり着きました。
見渡す限り、駅周辺は水に浸かっていて、どう考えてもうちの教室が助かっているはずはなかったのですが、、
教室の中を開けて見るまでは、もしかしたら部屋の中は大丈夫かもしれないと、かすかな期待をしていました。
停電の中扉を開けると、暗闇の中に、20センチほど水に浸かっている6台のハープ達を発見しました、、、
これまで積み上げてきたものが、目の前で音をたてて崩れ落ちていくような感覚でした。
どうか悪夢であって欲しい、と足が震えました。
でも、嘆いている暇もなく、これは現実に起きていることなんだ、と足に力を入れて気持ちを立て直し、ハープ達をいそいでテーブルの上に上げました。
それからは、この悪夢を早く終わらせたくて、1週間で教室を再開させようと決めて、必死で教室の片付けをしました。
ハープ達は弦をゆるめ、24時間除湿をつけて乾かしました。
ハープ達に特に変化も見られなかったので、多分、きっと大丈夫だろう、、と教室を再開しました。
そして、私の相棒とのお別れの時はやってきました。
再開初日の夜、その日の最後のレッスン中に、バーン❗と大きな音をたててハープの響鳴板が剥がれました。
あまりにも大きな音で、私も生徒さんも驚き、何が起きているのかわかりませんでした。
サウンドホールがいつまでも響いていて、まるでハープが「痛いよ、助けてーーー」と叫んでいるようでした。
慌てて弦をゆるめたのですが、しばらくするとまた大きな音をたてて、下の方まで剥がれてしまいました。
サウンドホールがいつまでもいつまでも寂しく響いていて、「さようなら」とお別れを告げているようでした。
生徒さんが帰られた後、「痛かったね、ごめんね」とハープをさすりながら一人泣きました。
この子はいつも私の心に寄り添ってくれて、私の思っていることを、代わりにおしゃべりしてくれているような、そんな存在でした。
そして、私を次々と新しい世界に連れて行ってくれました。
この音色に、どれだけ多くの人の心が癒されたことでしょう。。
子供の頃からピアノをやってきた時代も含め、こんなにも私の気持ちを理解してくれる楽器に出会うことは、後にも先にももうないだろうと思っていましたし、ずっとずっとずっと、一緒にいられると思っていました。
一緒にやってきた演奏会の数々の思い出と、もうこの先、二度とあの音色を奏でることが出来ないという悲しみ。
自分でも、言葉では言い表せないほどの思いでした。
けれどあの頃は、周りの沢山の人が豪雨被害で大変な思いをしていたので、自分が楽器を失って悲しいとか辛いとか、なかなか口に出すことが出来ませんでした。
~続く~
0コメント